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*一 話* *二 話* *三 話* *四話* *五話* *六話* *七話* *八話* *完結*

                                                                       お願い この物語の著作権は作者にあり、他への使用は禁止いたします。

  拝啓 あかりへ、あなたの子供たちに読んであげてください。

      子供に分るようにあなたの言葉で読んでくれたら幸いです。  父より

   

  亀のメイ物語   

                    *作  広瀬川 とんち  *挿絵  水野 瑞輝

  「メイのぼうけん編」

 たんじょう     

 

 五月のとっても天気のいい日のことでした。

やっと卵のからをやぶり、砂の中から外にはいだして出て来た小亀は、まだ自分が誰で何者なのか知

りませんでした。

 がんばって、からをやぶったのでつかれた小亀

は、そばに、自分と同じ格好をした小亀がたくさ

んいるのを見て安心して、ちょっと居眠りをして

しまいました。

ふと、目がさめまわりを見ると、さっきいた小亀

たちはいなくて、いつの間にか自分だけになって

ました。

自分はなんだろう。そばにある一円玉ぐらいの石

ころより小さいし、短い足が四本、背中は見えない

けどなにかかたい重いものをおんぶしている。

 ほかのみんなはどこに行ったんだろう。さがしていると、向こうから自分より小さいものがやって

ました。

足が六本あって大きいはさみと小さいはさみを二つ持っています。小亀に気がつかなくて、横歩きしな

がらやって来ました。

小亀は、友達になりたくて声をかけました。

「おい、君。そこでなにしているの?」

「あっ、びっくりした。なんだ、亀君じゃないか。君の仲間はみんな池の中に入って行ったぞ」

「ぼく、亀って言うの」

「そうだよ。なんだ、自分のことはなにも知らないんだ」

「そういう、君は何者だ?」                                                           

「ぼくは、かにだよ」

「へえ、君。自分のことが分かるんだ」

「亀君は、ほんとに何も知らないの」

「だれも、そんなことは教えてくれないんだ。

かに君はだれから教えてもらったの?」

「そんなのは、みんな知ってるよ。お母さんに

決まっているだろう」

「お母さんって、だあれ?」

「亀君、お母さんも知らないの。お母さんてね、

君を産んでくれたお母さん亀のことさ」

「かに君は、ものしりだね」

「それはね、ぼくはお母さんのおなかの中で卵から産まれたからだよ。そして少し大きくなるまでお母

さんが守ってくれて、いろんなことを教えてくれたんだ」

「ふうん、そうなんだ。ぼくは気がついたときには、お母さんはいなかったから、教えてくれなかった

んだ。だけど、君もまだ子供だろう。体もぼくよりずっと小さいし、君のお母さんは、そばにいないじ

ゃないか」

「ぼくはとっくにお母さんからはなれてひとりでやっているよ。いつまでもお母さんといっしょじゃみ

んなから笑われるよ」

「かに君、ぼくのお母さんはどこにいるか知っている?」

「そうだね。この池にはたくさんの亀さんがいるけど、君のお母さんはどの亀さんか分かんないな」

「ぼくは、お母さんにあいたい。どうして僕のお母さんは、僕をおいて行ってしまったのだろう」

「亀さんはね、みんなお母さんを知らないんだよ。卵から産まれたときから、みんなそうなんだよ」

「どうして?」

「ぼくは、どうしてか知らないけど。この池に住んでいる大亀のおじいさんなら、なんでも知っている

と思うよ。なんでもこの池で一番のものしりらいしいから。君のお母さんのことも何か分るかも知れな

いよ」

「その、大亀のおじいさんだったら知っているんだ。かに君そのおじいさんのところにつれて行ってく

れないか?」

「亀君、それはできないよ。池の中には、ぼくたちを食べてしまう恐い生き物がいるから、お母さんが

池の中には入ったらだめと言っていたから。大亀のおじいさんはね、天気のいい日に陸に上がってきて

ね、よくひるねしていると聞いたことがあるからさがすといいよ」

「うん、分かった。それではさがしてみるよ。ありがとう。かに君、また会おうね」

「亀君、がんばってね。ぼくも君がお母さんと会えることを祈っているね」

「それじゃ、さようなら」

「さようなら」

 小亀は後ろをふりむきふりむき池のほうに歩いて行きました。

かに君も、小亀が池の中に入って行くまで 、大きい方のはさみをふってはげましてくれました。

 初めて入る池の中、水は冷たかったけど気持ちよかった。

しばらく泳いでいると小さい魚のむれに会いました。

「おや、亀君がおよいでいる」十匹の魚が小亀のまわりを取り囲みました。

「君たちは、だあれ」

「ぼくらかい、ぼくらはメダカさ」

「メダカ君、友達がたくさんいていいね」

「今ね、べんきょうしているの。あっ先生が

きた」

「さあ、さあ、みんなならんで、ならんで。

小亀君、べんきょうのじゃまをしたらいけませ

んよ」

 メダカの先生は小亀にやさしく言いました。

「先生、ごめんなさい。ぼく、知らなかったの」

「そう。あなたは、迷子になったのね。まだ小さいか

ら危ないわよ。早く仲間の亀さんのところに行きなさい」

「ぼく、どっちに行っていいかも分らないの」

 小亀は心細くなって、泣きだしてしまいました。

それにはメダカの先生もこまってしまいました。

「いいわ。しばらくここでみんなといっしょにいなさい」

「亀君、よかったね」

メダカのこどもたちもよろこんで仲間に入れてくれました。

「それでは、みなさん。さっきのつづきをうたいますよ。いち、にい、さん、はい」

 

「♪ メダカのがっこうは、いけのなか、そっと、のぞいてみてごらん。そっと、のぞいてみてごら

ん、みんなでおゆうぎしているよ♪」

 

小亀もいつのまにか、うたをおぼえてみんなといっしょにうたっていました。

 

 

 

 次の話は 「小亀のメイのぼうけん」 だよ。

たのしみにね。

 

 

 

                          つづく               

 

小亀のメイのぼうけん (二)

 

 しばらく、メダカの学校でメダカたちとあそんだ小亀は、メダカにさようならを言って、また池の

中を泳いで行きました。

 すこしづつ深く池の中を泳いでいると後ろから何か来たと思ったら急に目の前がまっくらになり

(子供の目を閉じさせる)びっくりしていると、また目の前が明るくなりました。

「なんじゃ、小亀か。えさかと思ったぞ」

なんと、大きいこいが小亀をえさとまちがって大きい口でのみこんで、またはきだしたのです。

「わぁ、びっくりした」小亀がおどろいていると、

「こぞう、こんなところでなにをしている」

 大きい声でこいがたずねました。

「おじさんはだあれ?大亀のおじいさん」

「見れば分かるだろう。こいだよ」

「大亀のおじいさんじゃないのか」

「こぞう、大亀のおじいさんをさがしているのか」

「うん。こいのおじさん、知っているの?どこにいるか教えてください」

「こぞう、こういうときは「うん」じゃなくて「はい」と言った方がいいぞ。分かったな。」

「はい、こいのおじさん」

「そう、それでいい。そうだな、近ごろ大亀のおじいさんに会っていないな。そうだ、この池のもっと

南の底のほうに大亀のおじさんが住んでいるところがあったな。そっちに行けばなにか分かると思う

ぞ」

こいは南の方を向いて小亀にしんせつに教えてくれました。

「こいのおじさん、ありがとう。そっちの方に行ってみます」

「こぞう、気をつけて行きな。近ごろみなれない変な亀があちこち荒らし回ってらんぼうしているとい

うぞ」

「はい、こいのおじさん。分かりました」

 小亀はこいのおじさんとちゃんと話しができたことで、自分も大きくなったようなかんじがして少し

勇気が出てきました。

 小亀はこいのおじさんが教えてくれたように南の方へ深く泳いで行きました。

やがて岩がごつごつしている池のそこに着きました。

 まわりを見回してもだれもいません。

池のそこを、歩いてあちこちしていたらとつぜん、

「いたいぞ。だれだ」と足元でだれかがさけびました。

小亀はびっくりして、まわりを見てもだれもいません。

「だれかいますか」と小亀は小さい声で言いました。

「どこを見ているんだ。ここにいるじゃないか」

よく見ると、池の底の小石や岩の色をした、ひげをはやしている細くて長い体をしているものが、小

さい目をいっぱいあけて小亀をにらんでいました。

「あのう、すみません。大亀のおじいさんですか?」と小亀はたずねました。

「亀のぼうや、その前にあやまってくれよ。ぼうやは私を足でふんだのだよ」

「ごめんなさい。小石の色と同じだったから分かりませんでした」

「ふむふむ、そうか。そうだろうな。私の体は小石と同じ色をしているからなあ。大亀のおじい

さんではないぞ。私はどじょうじゃ」

ひげをなびかせて笑いながら、どじょうはやさしい顔になっていました。

小亀はおこっていたどじょうがやさしくなってほっとしました。

「どじょうのおじさんは、どうして小石の色と同じ色をしているのですか?」

ふしぎに思った小亀はどじょうにたずねました。

「ふむふむ、そうか。ふしぎだと思ったか。これはなあ、私を食べようとする敵から私の体を守るため

さ。ぼうやも、私がどこにいるか分からなかっただろう」

「ありがとう、どじょうのおじさん。よく分かりました」

「ふむふむ。ぼうやは、大亀のおじいさんをさがしているのかな?」

「はい、大亀のおじいさんをさがしています。どじょうのおじさん、知っていたら教えてください」

「ふむふむ、ちかごろ大亀のおじいさんには会っていないなあ。もっと南のほうに行ってごらんいつも

南の方からやってくるから」

「ありがとう、どじょうのおじさん」

「小亀のぼうや、気をつけて行きなさい。このごろ、このあたりもらんぼうなへんな亀がきて私の仲間

もひどいめにあったからね」

「はい、それではどじょうのおじさんもお元気で。さようなら」

「ぼうや、こまったときはまたおいで、さようなら。」

 

小亀はどじょうのおじさんにさようならを言うと、また南の方に泳いで行きました。

 もう夕方になったのか池の中も暗くなってきました。

小亀は大きい石の下で休むことにしました。きょう一日いろんなことがあったのでつかれていつのまに

かねむっていました。

 

 小亀の耳元でだれかが呼んでいます。

「私の、ぼうや。私の、ぼうや」

見るとぼんやりとした大きい影が見えます。

「お母さん、ぼくのお母さんだね?」

「そうよ、私の、ぼうや。ぼうやにあいたかった」

そう言うと、小亀をだきしめてくれました。

「お母さん、お母さんをさがしていたんだよ」

「ぼうや、私のぼうや」

「お母さん」

 小亀は大きい声でもう一度「お母さん」と呼びました。

そのとき小亀は目がさめ、お母さんはいなくなりました。小亀はゆめをみていたのでした。

 池の中はまっくらです。なんの音もしません。小亀はこわくて泣きそうになりました。でも小亀は泣

きませんでした。お母さんに会うまでは、泣かないときめたのです。 

 

 小亀はお母さんに会いたいと思っていたから、お母さんのゆめを見たんだね。

小亀はどんどん強くなっていきます。次のぼうけんはなんだろう。

 たのしみにね。

                                      つづく

 

                  

 

小亀のメイのぼうけん (三話)

 

 池の中にも朝日が照らしてきました。

小亀も目がさめて、きのうのゆめのことを思い出しました。

お母さんも、きっと自分に会いたがっていると思うと、小亀は元気がでました。

 さあ、今日も大亀のおじいさんをさがす旅がはじまりました。

(かれんちゃん、小亀が大亀のおじいさんに早く会えるようにおうえんしてね)

 

 今日はとってもいい天気です。池の中も明るくなって水草もいきいきしています。

小亀も気持ちよく南の方に向かってどんどん泳いで行きました。

小亀をこいのむれが追いぬきさって行きます。

 小亀は小さい足でいっしょうけんめいに泳ぐのですが、ほかの名前も知らない小さい魚からもどんど

んおい抜かれて行きます。

ときには、「おーい亀君、頑張れよ」と声をかけてはげましてくれたり、

「おはよう」とあいさつをしてくれたりする魚もいました。

小亀もそのたびに「ありがとう。おはよう」と元気な声でこたえました。

 小亀はいっきに泳いだものだからつかれました。

小亀は休むことにして、池の中のそこのほうに下りて行きました。

 岩の陰で休んでいると、太くて黒い長いものがにょろにょろと目の前を通りました。そして、通りす

ぎてからまたもどって来ました。

「なんだ、亀か」と言ってその主(ぬし)は、また行こうとしました。

「こんにちは」小亀は恐かったけど思いきってあいさつをしました。

「おう、こぞう。ちゃんと、あいさつができるなんてえらいぞ」

「おじさん。おじさんは、どじょうのお父さんですか?」

「わっははははは。どじょうのお父さんか。わっははははは」

 小亀がどじょうのお父さんと言ったものだから、その主は大きな声で笑いました。

「たしかになあ、どじょうに似(に)てはいるがなあ。わしはうなぎだよ。こぞう覚えておけよ」

「はい、うなぎのおじさん。ごめんなさい、どじょうのおじさんに似ていたものですから。でもどうし

て、どじょうのおじさんみたいなおひげがないのですか?」

「ひげか?……どじょうみたいな小さいひげがあってもしかたないやろ。こぞう、ひげはないがこのり

っぱな体を見てくれ。どじょうと比べもんにならんだろう」

 うなぎは、つよがりを言いましたが、小亀は納得して

「はい、そう思います」とこたえました。

「こぞう、すなおでよろしい。こぞうは立派な亀になるぞ」

うなぎのおじさんは小亀をほめてくれました。

「それはそうと。こぞう、こんなところでなにをしている。この辺もなんかそうぞうしくなって、危険

だぞ」

「はい。こいのおじさんや、どじょうのおじさんに聞きました。みなれない変な亀がらんぼうしている

と」

「そうなんじゃ。わしも話は聞いているが、まだ会ったことがないからどういうやつか知らんのじゃ。

早くなかまの亀のところに行ったほうがいいぞ」

「じつは、大亀のおじいさんをさがしているのです。うなぎのおじさん知りませんか?」

「おお、大亀のおじいさんか。わしも聞いた話じゃが、大亀のおじいさんたちがその変ならんぼう亀を

やっつけようとして仲間を集めているらしいぞ」

「大亀のおじいさんたちがらんぼう亀をやっつけるのですか。ぼくも仲間に入ってそのらんぼう亀を

やっつけたい」

「わっははははは。こぞう、やめておけ。その小さい体でできるものか。そのらんぼう亀はなあ、おま

えのなんばいの大きさなんだぞ。わしよりずっと大きい亀なんだぞ。こぞうなんか一口で食べられてし

まうぞ」

「うなぎのおじさん、大亀のおじいさんとそのらんぼう亀はどちらが大きいのですか?」

「それは、らんぼう亀の方が大きいらしいぞ。大亀のおじいさんより大きい若い亀がそのらんぼう亀と

対決して負けたということだ」

 うなぎのおじさんは目を白黒させながら話してくれました。

「そんなに、そのらんぼう亀は強いのか」

「こぞう。そういうことだから、気をつけて行きなさい。大亀のおじいさんはまだまだ南の方にいる。

それじゃがんばるのだぞ」

「うなぎのおじさんありがとう。ぼくがんばる」

 

 小亀はうなぎのおじさんにさようならを言うと、また南の方にむかって泳いで行きました。

 しばらく泳いでいると、小亀はなにか大きい物が後ろから泳いで来るけはいを感じ、池の底の方に下

りて岩の陰に隠れました。

 急に頭の上が暗くなりました。なにか大きいものが大きな泳ぐ音をさせて小亀の隠れている岩の上を

通って行きました。

 小亀は息を止めて岩陰からその大きい主(ぬし)を見ておどろきました。

なんと。その主は、きのうあった、こいのおじさんよりずっと大きかったのです。

 大きい体に太く長い首、大きい頭に大きい口、こうらから出ている四つの足はうなぎのおじさんの体

より太かった。今にもかみつきそうな恐い顔をしている。

 小亀は、この主がみんなが言っていたらんぼう亀だと思いました。

亀のおじいさんならもっとやさしい顔をしていると思いました。

 そのらんぼう亀が遠くに行ったのをたしかめて、らんぼう亀が泳いでいった方にまた泳ぎだしまし

た。

 「うなぎのおじさんが言ったとおり、ぼくなんかすぐに食べられちゃうな。早く大きくなってやっつ

けてやりたいよ」と小亀はひとり言を言いながら泳いで行きました。

 この辺には魚は一匹も泳いでいません。たぶんさっき、らんぼう亀が泳いで行ったからみんな逃げて

隠れているのでしょう。

 しばらく泳いでいると小亀の近くを魚が泳ぐようになりました。

くちぐちに魚のみんなが話しています。

「おお、恐かった。みんなだいじょうぶか?」

「北の方でなまずの親子がやられたらしいぞ」

「はやく、らんぼう亀をどうにかしないと、安心して泳いでいられないぞ」

「おい、小亀君。君も一匹で泳いでいたらあぶないぞ。やつを見かけたらすぐに逃げるんだぞ」

 魚たちも小亀のことを心配して声をかけてくれました。

「ありがとう。みなさん、ありがとう」

小亀は泳ぎながら魚たちにお礼を言いました。

 

小亀が大亀のおじいさんのところに、たどり着くのはまだまだみたいです。

 

 

                     つづく

               

小亀のメイのぼうけん(四

 

  小亀は一生懸命に小さい足で水を掻いて泳いでも進むきょりはわずかなものでした

疲れたら池のそこに下りて休み、また泳いでは休みを繰り返してやっと池の真中あたりに来ました。

ここらあたりは深くなっていて、もう池の底はまっくらでなにも見えません。

ひょっとしたらあのらんぼう亀がいるかもしれないと思った小亀は、水面に出て泳ぐことにしまし

た。

水面からまわりを見渡しても岸は遠くに見えるだけです。自分が産まれた北のほうの砂浜はもう見えま

せん。

 夕方になりあたりも暗くなってきました。それでもしばらく泳いでいると大きい流木が水面にただよ

っていました。

「そうだ、今日はこの木の上で休もう」

と決めた小亀はやっとのおもいで流木の上によじり登りました。

 

 まわりは静かで流木にあたる、ぽちゃぽちゃという波の音しか聞こえません。

今日もお母さんが来てくれるかなあ。と小亀はそう思いながら、つかれた足を伸ばして休みました。

流木にあたる波の音が子守唄に聞こえて、小亀はいつの間にかねむってしまいました。

 あたたかい風がふいたと思ったらぼんやりと影がゆれています。

「ぼうや、私のぼうや」

お母さんの呼ぶ息が小亀の耳にかかります。声が聞こえた方を見るとお母さんがすぐ後ろにいました。

「あっ、お母さん。やっぱり来てくれたんだ」

「私のぼうや、ここまでよくがんばったね」

「はい、お母さん」

お母さんはまた小亀を抱きしめてくれました。

小亀はしばらくお母さんの胸に顔をうずめていました。

「ぼうや」とお母さんが呼んで小亀が顔をあげるとお母さんはすっと消えていなくなりました。

「お母さん」と言って小亀がお母さんの後を追おうとしたら「ぼちゃん」という音と同じに目がさめま

した。小亀は流木から水の中にすべり落ちていました。

「お母さんまたどこかに行っちゃった」

小亀はひとりごとをいいながらまた流木の上によじり登りました。

 ふと、空を見た小亀は、

「うわぁ、きれいだ……」そう言うと空に見とれてしまいました。

なんと、空には宝石をちりばめたようにきらきらひかるお星さまが数えきらないぐらいたくさんかがや

いていました。 

 

  「♪どどそそららそ、ふぁふぁみみれれど、

    そそふぁふぁみみれ、そそふぁふぁみみれ、

   どどそそららそ、ふぁふぁみみれれど♪」

 

 お星さまの歌が聞こえてくるようでした。

小亀はしばらく空を見上げていました。そして、

早くお母さんにあえるようにお星さまにお願いし

ました。

 満天の星空の下で池にただよう流木にのり、小亀はまた深いねむりにつきました。どのくらいねむっ

ていたのでしょう。小亀は大きい雷の音でとつぜん目がさめました。

「ゴロゴロ、ピカッツ、ドオオン」ものすごい音です。

 まるで空を悪魔が大だいこをたたきながらかけまわっているみたいです。

空は黒い雲が流れてそのすきまからものすごいひかりが「ピカッ、ピカッ」と小亀をてらします。

さっきまでのあの星空がうそみたいでした。

こわくて、こわくて小亀はこうらの中に頭も足もひっこめてしまいました。

 こうらの上に大粒の雨が落ちて来ました。「ばしゃ、ばしゃ」池の水面は、小だいこをうちならすよ

うな雨の音がしています。

 強い風もふいてきました。池の水面がもりあがるように波も高くなってきました。

小亀がのっている流木も波にのまれて上に下に横にたてにとゆれます。小亀は流木から何回も振り落と

されるそうになりました。

 小亀はこうらから足を出して四本の足のつめで流木にしっ

かりつかまり振り落とされないようにしました。

 この嵐はひとばんじゅうつづきました。

小亀はひっしでこの流木から振り落とされないようにがん

ばるだけでした。

    

 

                    

 

 

挿入詩「おしえてください」

 

おしえてください、星たちよ。

泣いたら、泣いたらだめですか。

メイよ、メイよ。泣かないで。

明日を夢見ておやすみなさい。

 

おしえてください、風たちよ。

くじけたら、くじけたらだめですか。

メイよ、メイよ。くじけずに。

明日に希望をもって生きなさい。

 

おしえてください、太陽よ。

とまったら、とまったらだめですか。

メイよ、メイよ。とまらずに。

明日を信じて泳ぎなさい。

  

  

「おい、しっかりしろ」

「この小亀はもうだめかもしれない」

「あきらめるな。おい、だれか水をかけてやれ」

 小亀は頭ががんがんしてゆめをみているようでした。こうらから頭を出そうとしても力が出ません。

足を出そうとしても力が出ません。

 さっきからじぶんの近くでなにものかが話しているのが聞こえます。

「ゆうべの嵐でここまで流されて来たんだろう。もうだめだろうか」

「むりもないなあ。こんな小亀があの嵐にあったらひとたまりもないだろう」

「ああ、ぼくのことを話している」と思った小亀は「ぼくは元気だよ」と言おうとしますが声も出ませ

ん。

なにものかがこうらに水をかけてくれるのが分かりました。

「この小亀のこうらにはキズがある。たぶん岩かなんかにたたきつけられたのだろう。さいわいこうら

のキズだけだからよかった」

「しばらく、ようすをみるか。水だけはときどきかけてやってくれ」

小亀はなんとか頭を出そうとしますが、どうにも力が出ません。

小亀はあきらめてしばらく休むことにしました。

ときどき、なにものかがこうらに水をかけてくれていました。

その水の冷たさが小亀は気持ちよかったのでした。

 小亀はすこしづつ意識がはっきりしてきて、それと同時に

体がとても熱くなってきました。

せなかや足の指やつめがいたくなってきました。

きのうの嵐で流木から振り落とされないようにしっかりつか

まえていたので、それに力をつかいきって

しまったのでしょう。

 それとさっき、なにものかが言ってたように、嵐でこうらを岩かなにかにたたきつけたからいた

いのでしょう。

 

                           つづく

 

小亀を助けようとしているのは、なにものだろうね。早く元気になるように祈ってね。

 

         

 

小亀のメイのぼうけん(五)  

 

 小亀はしばらくこうらの中に頭や足を引き込めたまま休んでいました。

ときたま、なにものかが水をかけてくれていました。

 体のいたみも少しずつとれて、元気になってきました。

小亀はしっぽを動かしてみました。

「おい、みんな。小亀は生きているぞ。今、動いたぞ」

誰かがさけんで、みんなが小亀のところにやって来ました。

小亀はおそるおそる頭をこうらから出してみました。

「うおっ、生きているぞ。よかった。よかった。」

みんながくちぐちに言っています。

 小亀は目を開けようとしましたがまぶしくてまぶたをすぐにとじました。

少しずつまぶたを開けてみると回りにぼんやり大きい亀たちが見えました。

これは、ゆめなのかなあ。と思っていると

「おい、だいじょうぶか」

と大きい亀が声をかけました。

「はい。あのう、大亀のおじいさんですか」

と小亀はその亀にききました。

「あっははは。みんな、この小亀が俺のこと

を大亀のおじいさんか。だってよ」

まわりにいるみんなも笑い出しました。

「あのね。大亀のおじいさんは110歳のおじいさんだよ。ぼくなんかまだ六歳さ。君からみればま

あ、お兄さんかな」

「お兄さん、ぼくは大亀のおじいさんに会いたいんだ」

「後から連れて行くよ。それより君、だいじょうぶかい」

「はい、ありがとうございました。お兄さんたちのおかげで元気になりました」

「でも、ここまで来られたのは大したものだ。俺がここまで来た時は二十日かかったもんな。今年は君

が一番だったよ」

「ぼくがたまごから産まれた時はたくさんの仲間がいました。みんなはどうしたのですか」

「俺たち亀は、北の砂浜でみんな産まれるのさ。でもここまでたどりつけるのはほんの数匹さ。

ほかの小亀は途中でがんばるのをやめて深く暗い池の底に落ちていってしまう。この南の亀ランド

(国)まで、たどりつける亀がこの池で生きて行けるということなんだよ」

もう一匹の亀が言いました。

「そうなんだ。それだけ強い力と強い勇気がないとこの池では生きて行けないんだよ。大亀のおじいさ

んはこの池で一番の長生きなんだ。それとなんでも知っているからあとできくといいよ」

「お兄さん、ありがとう」

 

 小亀は昨夜の嵐で流木にしがみついている間にこの南の亀ランドに流されて来ていたのでした。

 小亀の最後まであきらめなかった勇気と、お母さんに会うんだという強い心が幸運をもたらしたので

した。

 小亀はやっと歩けるようになりました。

お兄さん亀に連れられてまた池の中に入り、大きい岩穴のあるところまで泳いで来ました。

「さあ、ここだよ。この岩穴の中に大亀のおじいさんがいるから。この先は君だけで行ってごらん」

 お兄さん亀はそう言うとまた引き返して行きました。

小亀はおそるおそる岩穴の中に入って行きました。水面からそう深くなかったので岩穴の中は明るかっ

た。

 しばらく泳いでいると岩穴の中に大きい丸い岩があって、その上に大きい亀がいました。小亀が来る

のが分かっていたみたいに、小亀をやさしい顔で見ていました。

 小亀はその岩に下りて大亀の所まで歩いて行きました。

「こんにちは、大亀のおじいさんですか」

小亀はたずねました。

「そうだよ、わしが大亀のおじいさんだよ。よくがんばってここまで来たのう」

大亀のおじいさんはやさしくこたえてくれました。

 小亀は北の砂浜で卵から産まれたときからここまであったことを話しました。

 「そうだったのか。分かった。その前に、おまえに名前を付けないといけないのでのう。名前を付け

るのがわしの役目でのう。うん、そうだメイと名づけよう。今日からおまえはメイという名前じゃあ。

分かったのう」

「はい、ありがとうございます」

小亀は大亀のおじいさんから「メイ」という名前を付けてもらいました。

「メイ、お母さんに会いたいか」

「はい、会いたいです」

「そうか。じつは、わしにもメイのお母さんはどのお母さん亀か分からん。我々亀は、自分のお母

さん亀はだれなのか分からんのじゃ。言えることは、それは我々のたましいの中にいる。

つまりだな。おまえの心の中にいるお母さんがおまえのお母さんじゃ。お母さん亀のお腹(なか)にお

まえが卵でいるときに、お母さん亀はおまえに生きる力と勇気とをちゃんと教えている。だから、おま

えはここまで来れたんだ。その力と勇気こそがおまえのお母さんがおまえにくれたものなんだぞ。

分かったかのう?」

「大亀のおじいさん。それでは、ぼくがゆめで会ったお母さんがそうなんですか」

「そういうことだ。お母さんは、いつもおまえのたましい、つまり心の中にいる。だから会いたい時は

いつでも会えるんじゃのう」

「大亀のおじいさん、ありがとう。よくわかりました」

 それから小亀のメイは二度とお母さんをさがすと言わなくなりました。

「それからメイ、おまえがさっき言ってたらんぼう亀のことじゃのう。こまったことに強くてなあ

我々の若い亀たちが対決したのだが、なかなか勝てないんじゃのう。

おまえは勇気がある。だけどその小さい体ではとてもむりじゃのう。ここでほかの若い亀たちと修行

(しゅぎょう)して強くなってくれ。そして体も大きくなったら、らんぼう亀をやっつけてくれ。それ

まではらんぼう亀に出会っても対決したらいけないぞ。分かったのう」

 大亀のおじいさんは小亀のメイにそう話すと奥にいた若い亀を呼びました。

「ムク、おまえにこのメイをあずける。いろいろめんどうをみて教えてやってくれ」

「はい、大亀のおじいさん。かならず」

そう言うとメイの方を見てききました。

「メイ、今からおまえは俺たちと修行する。がんばれるか?」

「はい、よろしくおねがいします」

小亀のメイはムクにちかいました。

 

 

                         つづく

 

  さあ、小亀のメイはどうなっていくのだろうね。

  らんぼう亀との対決の日はやってくるのかなあ。

  おうえんしてね。

                          

               

 

 

   メイのぼうけん(六話)              

 

 メイの仲間

 

 小亀のメイはお兄さん亀たちと朝から夜まで一緒に暮らす事になりました。

お兄さん亀たちは小亀のメイにやさしく、時にはきびしく亀の世界のおきてや決まりごとを教えてくれ

ました。

 小亀のメイはお兄さん亀の教えてくれることを素直によく聞きました。

わがままは、いくら小さい亀でもとおりません。わがままを言ったらほかのお兄さん亀や仲間に迷惑を

かけるからです。

 体も強く、気持ちも強くならなければこの池では生きていけません。

そのためのべんきょうもしなければなりませんでした。

 小亀のメイがこの亀ランドにきてからしばらくして、小亀のメイと一緒に北の砂浜で産まれた二匹の

小亀がたどりつきました。

 大亀のおじいさんから「ラム」と「ミア」と名前を付けてもらいました。

 メイは自分とおなじ歳の仲間が出来てそれは喜びました。

「ラム」は活発でやさしい女の子でした。「ミア」は元気で勇気のある男の子です。やはりムクお兄さ

ん亀がめんどうをみることになりました。

 ある日ムクお兄さん亀が三匹を呼びました。

「メイ、ラム、ミア。今日はちょっと遠くまで出かける。私におくれないように泳いで来なさい。分か

ってると思うがわがままな行動はしないように。いいかな」

「はい」と三匹は声をそろえて答えました。

ムクお兄さん亀はゆっくりと泳ぎだしました。

お兄さん亀はゆっくりでもメイ達はついていくのは大変でした。

 ちょとでもよそ見でもしたら、すぐにお兄さん亀において行かれます。

南の亀ランドから東の方に浅い所を泳いで行きました。

 やがて、大きい岩や小さい岩がごつごつしている所につきました。

ムクお兄さん亀が三匹に言いました。

「いいかな。今日からここで一人前の亀になるための修業をする」

                        

 

   いよいよきびしい修行が始まりました。

                つづく

 

 

   メイのぼうけん(七話)

  対 決

 

ムクお兄さんについて修行を始めてから五年の月日が流れました。

メイも五歳になりました。身長も10センチになり、だれもこぞうとか小亀のメイと呼ばなくなりまし

た。

 仲間のラムもミアも同じく成長してりっぱな若亀になっています。

 

 その修行はだれもがびっくりするほどの成果でした。

まずメイは、泳ぎがうまくて速く、ムクお兄さんも軽く抜くぐらいの力をつけました。

ミアは力が強く、このままきたえていけば亀ランド一の力持ちになると言われるようになりました。 

 ラムは女の子ですが、修行にもしんぼう強くついてきて、頭の良さは若い亀の中では一番だろうと言

われました。 

 この池では、まだあのらんぼう亀があばれていました。

すっかり、ほかの魚たちもこわがり池の中は静かになっていました。

こいのおじさんやうなぎのおじさんが大亀のおじいさんに助けを求めにやって来ていました。

 そのたびに、若い亀たちがらんぼう亀にむかっていきましたが、いつも負けてしまいます。

 

 ある日、メイとミア、ラムが大亀のおじいさんのところにやって来て、自分たちでらんぼう亀に挑戦

(ちょうせん)したいと申し出ました。 

「メイ、ミア、ラム。おまえたちのくやしい気持ちは分るがのう。その勇気はわしは大切に思う。だ

けどじゃ、まだまだおまえたちは小さい。やつにかかったらひとたまりもないじゃろう。今の二倍、つ

まりだのう、ムクたちの大きさになるまでまってくれんかのう。

 いいか、必ずおまえたちの出番がやって来る。そのときまでやつに出会ってもぜったいに、やつにむ

かって行くな。わかったのう」 

 大亀のおじいさんに「ぜったいにだめだ」と言われたメイたちはしぶしぶ大亀のおじいさんのところ

を後にしました。

 

 大亀のおじいさんにそう言われても、メイたちは心の中ではらんぼう亀に負けるはずはない。あれだ

け厳しい修行をしてきたのだから、という気持ちがありました。 

 メイは「おれなんか、ムクお兄さんに泳ぎじゃ負けないんだ」と言い

ミアは「力だったら、絶対に負けないよ」とじまんしました。

 ラムは「そうよ、あれだけ厳しい修行をしてきたのだもん。あんな頭の悪るそうならんぼう亀に負け

るはずはないわよね」とくやしがりました。

 

 それからも、毎日ムクお兄さんについて修行です。

メイは水面から底までいっきにもぐる練習です。

ミアはムクと一本の棒のはしをお互いに口でくわえて綱引きのように引っぱりあって力をつける練習で

す。

ラムは早く泳ぐ練習です。

 

 冬が近づいて池の水もだんだんと冷たくなって来ました。

冷たい水の中では体が思うように動きません。

 

 亀ランド゙の亀たちは冬になると冬眠(とうみん)をして寒い冬をすごします。

冬眠というのは、亀たちは人間みたいに寒くなったら服を着たり、ストーブなどで暖かくできないの

で、冬の間、池のふちの砂や土の中にもぐり土の温度で寒さから体温と体力をなくさないようにじっと

眠って、暖かくなった春にもぐっていた土の中から出て来ることを言います。

 

 メイたちも陸にあがり土の中に穴をほって冬眠に入りました。

 寒い冬も終わり、やがて池のまわりに植えてある桜にも花が咲き、花びらが池にまい散る春になりま

した。

 

 あちこちの土の中から目ざめた亀たちが池の中に帰って行きます。

亀たちにとって新しい年の始まりです。

 

 メイも、またひとまわり大きくなって元気よく池の中に帰って来ました。

後からミアとラムも元気な顔を見せ、冬眠をぶじにすごせたことを喜びました。

というのも、中には土の中からそのまま出てこない亀もいました。

病気している亀や冬眠の前にえさをいっぱい食べなかった亀は厳しい冬眠をすごせず、死んでしまっ

たのです。

 自然の中で生きて行くというのは、生き物にとって大変なことなのです。

 

メイたちはさっそく大亀のおじいさんのところへ行きました。

「大亀のおじいさん、おめでとうございます。今年もよろしくおねがいします」

「おお。メイ、ミア、ラム元気でよかった。おめでとう。今年もよーく修行するのだぞ。わかったの

う」

 

 大亀のおじいさんに祝福してもらい、メイたちはムクのところへ向かいました。

 

ムクの棲家(すみか)に行くともう二匹の亀がいました。

「おう、来たな。みんなに紹介する。なまえは、シンとミン。今日からみんなの仲間になる。四歳だ」

「シンです。よろしくおねがいします」

「ミンです。よろしくおねがいします」

「メイとミア、こちっがラム。みんなでめんどうみてくれ」

 

ムクの紹介もおわり、さっそくいつもの修行の場所に行くことになりました。

 

 ムクを先頭に一列になって泳いで行きました。

ところが、途中で魚たちが大騒ぎしているところに出会いました。

「逃げろ」という魚の声があちこちからしています。

 

見ると、あのらんぼう亀が魚たちを追いまわしているではありませんか。

メイとミアがたまらずらんぼう亀にむかって行きました。

「メイ、ミアもどれ」とムクが叫びましたが、二匹はかまわずらんぼう亀に突進して行きます。

 ラムもむかって行きました。

「もどれ、もどれ。行くなー」とムクが何度も叫びますが、三匹は言うことをきかずらんぼう亀のあと

を追っています。

 

 このままでは、やられると考えたムクは、シンとミンに大亀のおじいさんのところに、ほかの亀の応

援をくれるよう伝えに行かせました。

 

 シンとミンが引き返したのを見てから、ムクもらんぼう亀のあとを追いました。

 やっと追いついたメイは、逃げている魚たちとらんぼう亀の間に入ってらんぼう亀の頭に体当たりを

して魚たちを逃がしました。

今度は、らんぼう亀はメイにむかって来て、前足で軽くたたかれたメイは池の底のほうにはじきとばさ

れました。 

 ミアはらんぼう亀の大きいしっぽにかみつきましたが、らんぼう亀が二度ほどしっぽをふると同じよ

うにミアもとばされました。

 ラムは、らんぼう亀の背中に体当たりしましたが、らんぼう亀にはききません。

 らんぼう亀はラムにおそいかかり、ラムをつかまえると大きい口でラムのしっぽをくわえて池の底の

ほうにどんどん引きつれて泳いで行きます。

 ラムは、はげしく抵抗してあばれますが、らんぼう亀の力にはとてもかなわないのです。

そのままずるずるとらんぼう亀につれさらわれて行きます。

 

 ムクが追いついて来たときには、暗い池の底にラムをくわえて行くところでした。

 ムクは必死で泳ぎ、あとを追いましたが暗い池の底でらんぼう亀は見えなくなりました。

 しかたなく、ムクは引き返しメイとミアを助けて亀ランドに引き返すことにしました。

 さいわいメイとミアは、けがもなくて大丈夫でしたが、ラムがらんぼう亀にさらわれたことで、自分

らがあのときムクの言うことをきいておけばと思いましたが、もうどうすることもできません。

 二匹は、しょんぼりしてラムのことを思い今にも泣き出しそうです。

「メイ、ミア。反省したか?おまえたちのしたことでどうなったか、よく考えろ」

 とムクにしかられました。

 

 亀ランドに向かうとちゅう、大亀のおじいさんに応援の命令を受けた十匹の若い亀がやって来まし

た。

 ムクは事情を話し、その中の一匹にメイとミアを頼んで、ラムがつれさられた方向に残りの亀たちと

ラムを助けに出発しました。 

 

 

 ラムはどうなるのでしょうか?心配です。

 

 

                     つづく

 

メイのぼうけん(八話)

 

  らんぼう亀

 

 メイとミアは亀ランドに帰り、大亀のおじいさんのところに連れて行かれました。 

 「メイ、ミア。おまえたち、けがはしなかったか?どうだった?やつの強さを思い知ったであろう。

勇気だけでかなう相手ではなかったじゃろう。もう、やつと戦う気持ちもなくなったであろうなあ」 

 大亀のおじいさんは、やさしくメイとミアにかたりかけました。

大亀のおじいさんにひどく怒られると思っていた二匹は大亀のおじいさんのその言葉をきくといちだん

と自分らがしたことを反省しました。

 

 「大亀のおじいさん。ごめんなさい。ぜったいだめだと言われていたのに、らんぼう亀が魚を追いま

わしているのをみたら、なんにも考えずに戦ってしまいました。そのせいで、ラムが、ラムが」

そこまでいうと、二匹はたまらず泣き出してしまいました。

 

 「おまえたち、それが分ればよい。ラムのことは心配じゃが、ラムはムクたちがさがして、助けてく

れると信じておる。おまえたち二匹が勇気を失うことが心配じゃ」

 「大亀のおじいさん。おれたち、もっと体をきたえてあのらんぼう亀と戦う。そしてこの池に平和が

来てみんなが楽しく暮らせるようにしたい」 

 「そうか、それでいい。それでいいんじゃ」

大亀のおじいさんは目を細めて何回もうなずきました。

 

 それから、二日ほどしてムクたちが亀ランドに帰って来ました。

みんなが、心配していたラムの姿はそこにはありませんでした。

 「大亀のおじいさん、ラムとやつが消えた池の底あたりからずっとさがしたのですが、ラムもやつも

見当たりませんでした。あのあたりに二匹ほどラムをさがすためにおいてきました。私もまたさがしに

出発します」

 

 心配して、かけつけていたメイとミアは大亀のおじいさんとムクに

「私たちも、一緒にさがしに行かせてください」とたのみました。 

「ムク、どうするか?メイとミアがこう言っているが」大亀のおじいさんがムクにたずねました。 

「さがすのは、一匹でも多いほうが助かります。メイもミアもじゅうぶん反省しているでしょうから、

私からもお願いします」とムクも大亀のおじいさんにたのんでくれました。 

「それでは、分っていると思うがこんどはラムをさがすことが目的だからのう。もし、やつと出会って

もぜったいに、戦うな。みんな分ったのう」と大亀のおじいさんに念をおされて、さっそく、メイとミ

アは、ほかの若い亀たちと一緒にムクについて出発して行きました。

 

 らんぼう亀とラムが消えた池の底につきました。

二匹の残っていた亀も合流して、三匹ずつ分かれてさがすことになりました。

ムクのところにはメイとミアがつくことになり、北の方をさがすことにしました。というのもメイが

北の砂浜で産まれて南の亀ランドに帰るとき、らんぼう亀に会った場所あたりにらんぼう亀の棲家(す

みか)があるのではと、メイが思ったからです。 

 さがし始めてからもう三日もたちましたが、メイたちはラムもらんぼう亀も見つけることができませ

ん。

みんな、へとへとに疲れていましたが、だれもさがすのをやめようとか、あきらめようと言いませんで

した。 

 池の底にしずんでいないか、水面に浮いていないか、一日じゅうさがしました。ときたま出会う魚た

ちも協力してさがしてくれましたが見つかりません。 

 五日目にメイが思い出したようにムクに言いました。

「ひよっとして、陸の上に打ち上げられているかもしれない」

「あっ、そうか。そこはまださがしていない。北の砂浜に行ってみよう」

三匹は急いで北の砂浜に向かって泳ぎだしました。

北の砂浜が見えてきました。

三匹は陸にあがると砂の上に亀が一匹うずくまっているのを見つけました。

「おい、ラム」「ラム大丈夫か」「やったぁ、よかった。ラムさがしたんだよ」

と喜びました。いままでの疲れもいっぺんにふっとんでしまいました。

 

ラムは元気がなく弱っていましたが三匹に気づくと、安心したのか目に涙をいっぱいためて

「ごめんなさい」と泣きじゃくりました。

「ラム、おれたちこそごめんな。おまえまでまきこんで」とメイもミアもあやまりました。

「ラム、よかった。みんな心配していたんだ。どうだ泳げるか?」

ムクが心配して声をかけましたが、みるとらんぼう亀にかまれたしっぽが傷ついています。

「よし、俺の背中につかまって帰ればいいよ」とメイが言えば

「おれも交代しておんぶしていくよ」とミアが言いました。

 

「それでは、亀ランドに向かって出発だ。早くみんなを安心させねばなあ」とムクが先頭にたって池の

中を泳ぎ出し、メイがラムを背中に乗せてその後をミアが泳いで行きました。

 ほかのラムをさがしている亀たちに、ラムが見つかったことを途中で出会った魚たちに、伝えてもら

うようにたのんで、まっすぐ亀ランドに向かって泳いで行きました。

 

 亀ランドにつき、そのまま大亀のおじいさんのところに行って無事に見つかったことを報告しまし

た。

 ラムの話で、らんぼう亀も、メイの体当たりを頭にうけて頭をけがをしていることや、ミアがかみつ

いたしっぽがかみきられていることが分かりました。

 ラムは、池の真中あたりの暗い底につれて行かれましたが、しばらくしてらんぼう亀がかんでいたラ

ムのしっぽをはなしたので、意識のうすれるなかを夢中で泳いで逃げたらいつのまにか北の砂浜につい

ていたらしいことも分りました。 

 「そうだったのか。どうりで、やつも見つからなかったわけだ。けがをして動けなかったのだな。

でもこれからが大変だぞ。やつがしかえしに来るかもしれない」

 とムクが心配して言いました。

「ほかの亀たちもみんな、ここに集まるようにしたほうがいいじゃろう。ムクみんなに知らせるのじ

ゃ。大至急じゃ」と大亀のおじいさんが命令しました。

 

 

 

    ラムが見つかってよかった。でもらんぼう亀がしかえしに来る。どうする、メイ

 

                    つづく

 

 

 

 

メイのぼうけん 九話《完結》

 

  平 和

 

 大亀のおじいさんの命令で、池に住んでいる亀が南の亀ランドに集まってきました。 

 そして、大亀のおじいさんがみんなの前で話し出しました。

 

「いいかみんな。みんなが知っているように、この池の平和を乱す亀がいる。

我々とは、まったく違う見たこともない亀じゃ。今まで何回となく戦ってきたが、残念ながら負けてば

かりいた。このたび、ここにいるメイとミア、ラムの三匹が勇敢にもやつと戦い、やつに傷を負わせ

た。  多分、やつはしかえしのためこの南の亀ランドをおそうだろう。

我々が、ばらばらになっていたらやつにやられる。だからみんなに集まってもらった。

 もう、やつとの戦いも終わりにしなければいけない。この池の平和のため我らが団結してやつと戦お

う。我々の中にも犠牲がでるかもしれないがやらなければいけないのだ」

大亀のおじいさんがそう呼びかけると   

「分った。戦おう」

「おれも戦うぞ」

「大亀のおじいさん。みんなで戦おう」

「メイたちには負けておられん。やるぞー」

みんなは歓声で大亀のおじいさんの呼びかけにこたえました。  

 

 さっそく池のあちこちに見張りをおいてらんぼう亀の動きをさぐることになりました。

 らんぼう亀が南の亀ランドに向かってくればすぐ分ります。

 

一週間ほどしてけががなおったのか、らんぼう亀が暗い池の底から出てきて動き出したと亀ランドの大

亀のおじいさんのところに知らせがありました。  

「いよいよだな。全員そのつもりで準備するように」

と大亀のおじいさんが ムクたちに指示をしました。

 らんぼう亀がやってくればいつでも戦える陣形ができていました。

 それから、二日後の朝早く知らせが入りました。

「らんぼう亀がこちらに向かってやってくるぞ」

「よし、みんなに知らせて。陣形を組むように」

「ミンは北の陣地に知らせて。シンは南だ。ナキは東、ヨモは西だ」

前もって決めていたようにムクがそれぞれに指示をとばします。

 メイとラム、ミアは大亀のおじいさんを守ることになっていました。

それぞれ一番前にはムクくらいの大きい若い亀が構えて、そのあとに体の大きい順に並んで、老いた亀

や小亀は後方で待ち構えました。

 

 見張りから次々と知らせが入ってきます。

らんぼう亀はもうそこまで来ていました。

 

 やがて、らんぼう亀がゆっくりと亀ランドに入り、ムクや大亀のおじいさんの前にあの大きい体を現

しました。

らんぼう亀の周りを東、西、南、北とそれぞれの陣地の亀たちが決めていたように取り囲みます。 

  いよいよ戦いがはじまります。みんなきんちょうして成り行きをみています。

 

 ところが、らんぼう亀は正面のムクたちをにらんで動きません。負けずにムクたちもらんぼう亀をに

らみつけました。

 らんぼう亀のひたいにはメイが体当たりした時の傷が大きく残っていました。しっぽはミアがかみき

っているのが分ります。 

 にらみあいがつづきます。どちらも動きません。  

 しばらくして、ムクの後ろにいたメイに気づいたらんぼう亀が、亀ランドじゅうに響くような大きい

声で  

「おい、そこのこぞう。出て来い。この俺の頭に傷つけたおまえだ。出て来い」

メイに出て来るように言いました。 

 メイが出て行こうとすると、ムクがメイを止めてらんぼう亀に言いました。 

「それは、できない。おまえは、今までこの池でいいようにあばれて我らや魚たちをいじめた。らんぼ

うをはたらいた。だから、我々は同じ亀として、おまえにそれをさせないため戦ってきた。この池の平

和のためその戦いも終わりにしなければならない。今日決着をつける」

 すると、らんぼう亀もムクをにらみつけて 

「なにを言う。いじめられたのは俺のほうだ。俺が、最初にこの池にやってきた時、だれも仲間になっ

てくれなかった。俺が話しかけてもみんな逃げてだれも相手にしてくれなかった。俺がそばを通っただ

けで魚たちは逃げて近寄らなかった。俺はなんにもしないのに、この体が大きいと言うだけでみんなが

怖がって、らんぼうをするという噂をした。だから俺はそのとおり、噂どおりらんぼうをした。それだ

けだ」

と言い返しました。

 らんぼう亀の話をずっと聞いていた大亀のおじいさんが前に出てきてらんぼう亀に話しました。  

 「わしが、この亀たちの長老じゃ。おまえの話は分った。それだったら、わしらもおまえに悪いこと

をした。この池の魚たちにもおまえの今話したことを聞かせれば、思い当たることもあるじゃろう。

また、反省もしよう。どうじゃ、おまえもらんぼうをやめないか。我々も戦うのをやめる。

これから、仲間として仲良くやっていこうではないか」

大亀のおじいさんの話を聞いてらんぼう亀の表情が変わりました。  

「もともと、俺はそういうつもりではなかった。長老がそういうことをこの池の魚たちに言ってくれれ

ばそれでいい。俺は戦いはしたくない」 

らんぼう亀はおだやかな声になってそうこたえました。

「もう、戦わなくてもいいんだ」

見守っていた亀ランドの亀たちの安堵(あんど)の声が聞こえます。

  大亀のおじいさんとらんぼう亀の話がつづきます。

「長老、俺のこの頭に体当たりした亀はなんと言う名前だ。小さい体でむかってきた。その勇気に俺は

目がさめた。もうこれ以上この池にいたらいけない。出て行こうという思いで、今日こうしてやってき

たのだ」   

「その勇気ある亀の名前はメイという。ところでおまえの名前も聞かせてもらえんか」

「俺の名前は、カイという。人間と言う生き物がつけてくれた名前だ」

「そうだったのか。人間に飼われていたのか。それで人間から逃げてきたのか」

「逃げてきたのではない。俺は遠い南の国のジャングルで産まれた。そこで人間につかまりこの国にき

た。ペット屋というところで人間の子供に売られて、その子供のペットになった。小さい頃はかわいい

とそれはかわいがってくれた。それが俺がだんだん大きくなってくると見向きもしてくれなくなって、

この体になったら、もういらないとこの池に捨てられたというわけだ」

 

「そういうわけだったのか。それはかわいそうに。カイ、だったらなおのこと、この池で仲良くしてい

こうではないか。我々は仲間だ」

 大亀のおじいさんがカイにやさしく語りかけました。 

「……長老、……ありがとう」

大きいカイの目に涙があふれこぼれました。

 飼われていた人間に捨てられて、この池でものけ者になっていた。どんなにか淋しかったのでしょ

う。

大亀のおじいさんの言った「仲間」と言う言葉が、らんぼう亀にとってどんなにかうれしい言葉だった

のでしょう。 

「みんな、聞いたとおりだ。仲良くしてくれるな」

 大亀のおじいさんがみんなに呼びかけました。

「カイ、よろしくな」

みんながカイに声をかけ仲間になることを喜びました。

  メイもカイの前に出て来て握手をして仲間入りを喜びました。 

「カイ、よろしくな。頭の傷は大丈夫か?」

 とメイが心配すると

「メイ、こちらこそ。こんな傷なんかたいしたことはない、俺もおまえの勇気は見習いたい。友達にな

ってくれ!」

 とカイがこたえ、しっかりとメイとの握手に力を入れました。

 

 こうして、この池に平和がおとずれたのでした。

 

 

                             おわり

 

 

 あとがき。

 よかったね。メイたちの活躍で池の中が平和になりました。

みんなも、ともだちと仲良くしているかな。ともだちは大切にしようね。 いじめっこも本当はやさしい

心があるのだね。さみしかったり、ほかの人にいじめられたりしたことがあるかもしれないから、みん

なで仲間に入れてあげる勇気も必要だね。

 それと、もしペットを飼うのだったらよくめんどうをみて、大事にそだてるんだよ。亀のカイみたい

に捨てられたらかわいそうだよね。

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